「肩が重くて仕事に集中できない」
「マッサージを受けると楽になるけれど、しばらくするとまた凝ってくる」
「デスクワークをしていると夕方には首から肩がガチガチになる」
このような肩こりに悩んでいませんか?
肩がつらいと、どうしても凝っている肩そのものを揉んだり伸ばしたりしたくなると思います。
もちろん、肩周辺の筋肉に対するケアが必要な場合もあります。
しかし、慢性的な肩こりでは、肩だけではなく、長時間の同じ姿勢、運動不足、ストレス、首や背中の状態など、複数の要素が重なっていることがあります。
さらに当院では、肩こりがある方の身体を確認するときに「胸椎」と「呼吸」も大切にしています。
- そもそも肩こりとは何なのか
- なぜ肩こりを繰り返すのか
- 猫背や巻き肩と肩こりの関係
- 肩こりなのに胸椎を見る理由
- 肩こりと呼吸の関係
- 自分でできる肩こり対策
- 整体や鍼ではどのように身体を見るのか
- 病院を受診したほうがよい症状
まで、肩こりについて詳しく解説していきます。
肩こりとは?
「肩こり」は日常的によく使う言葉ですが、人によって感じ方はさまざまです。
「首から肩が張る」
「肩甲骨の内側が痛い」
「首の付け根が詰まっている感じがする」
など、表現も場所も人によって異なります。
日本整形外科学会では、肩こりについて、首すじや首の付け根から肩・背中にかけて「張った」「凝った」「痛い」などの感覚が生じ、場合によっては頭痛や吐き気を伴うこともあると説明しています。
肩こりに関係する筋肉はいくつもありますが、代表的なのが「僧帽筋」です。
僧帽筋は首の後ろから肩、さらに背中まで広がっている大きな筋肉です。
そのため「肩こり」といっても、肩だけの問題として考えるのではなく、首や背中まで含めて確認する必要があります。
肩こりの原因は一つではない
「肩こり=姿勢が悪いから」と考えている方も多いと思います。
確かに姿勢は一つの要素です。
しかし、肩こりはそれほど単純ではありません。
日本整形外科学会では、肩こりに関係する要素として、
- 首や背中が緊張する姿勢での作業
- 猫背や前かがみ
- 運動不足
- 精神的なストレス
- 長時間同じ姿勢を続けること
- 身体的な特徴
- バッグなどによる負担
などを挙げています。
つまり、同じ「肩こり」という症状でも、その背景は人によって違います。
デスクワークが多い人。
スマートフォンを見る時間が長い人。
運動する習慣が少ない人。
仕事中に緊張することが多い人。
子育てで抱っこの時間が長い人。
それぞれ肩に負担がかかる理由は違います。
「肩が硬いから肩を揉む」だけではなく、
「なぜ肩に負担が集中しているのか?」まで考えることが大切です。
なぜ肩を揉んでも、また凝ってしまうのか?
マッサージなどで肩周辺をほぐしてもらい、「すごく軽くなった!」と感じた経験がある方もいるでしょう。
筋肉への施術によって、一時的に張りや不快感が軽くなること自体は不思議なことではありません。
ただし、その後も毎日同じ姿勢・同じ身体の使い方を続けていれば、再び同じ場所へ負担が集中する可能性があります。
例えば、パソコンを見るために頭が前へ出た状態で何時間も仕事をしているとします。
その状態では、首や肩周辺の筋肉は頭や腕を支えるために働き続けます。
施術で肩をほぐしたとしても、翌日から同じ環境で長時間作業をすれば、再び肩周辺へ負担がかかります。
「どうして肩が頑張り続けなければならない身体になっているのか」を考えることが大切です。
猫背・巻き肩と肩こりの関係
肩こりに悩んでいる方から、「姿勢が悪いからでしょうか?」と質問されることがあります。
猫背や前かがみの姿勢は、肩こりに関連する要素の一つとして日本整形外科学会も挙げています。
ただし、「姿勢が悪い=必ず肩こりになる」という単純な話ではありません。
姿勢には個人差がありますし、「理想的な姿勢を一日中維持しなければいけない」ということでもありません。
むしろ問題になりやすいのは、一つの姿勢を長時間続けることです。
↓
背中が丸くなる
↓
肩が前へ入りやすくなる
↓
その姿勢で長時間作業する
姿勢だけですべての肩こりを説明することはできません。
そのため当院でも、姿勢写真だけを見て「ここが悪いから肩こりです」と決めつけることはせず、実際の身体の動きと合わせて考えます。
「良い姿勢をずっと保つ」より大切なこと
肩こり対策として、「胸を張ってください」「背筋を伸ばしてください」と言われた経験がある方もいるかもしれません。
しかし、それを意識しすぎるあまり、
- 胸を必要以上に張る
- 肩甲骨をずっと寄せる
- 腰を反らせる
- 身体に力を入れ続ける
という状態になってしまうことがあります。
これでは「姿勢を良くしようとして身体を緊張させている」という別の問題が起こります。
身体にとって大切なのは、一つの完璧な姿勢を固定することではありません。
立つ。
歩く。
身体を伸ばす。
肩を動かす。
このように、姿勢をこまめに変えることも大切です。
厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」でも、パソコン等を使う作業者の心身の負担を軽減するため、作業環境・作業方法・作業時間などを適切に管理することが重要とされています。
肩こりなのに「胸椎」を見る理由
ここからは、鍼灸ライフ整体院が肩こりを見るときに大切にしているポイントについて説明します。
その一つが「胸椎」です。
胸椎とは、背骨のうち胸の高さにある部分です。
胸・背中の部分=胸椎
腰の部分=腰椎
肩こりなのだから、首や肩を見ればいいのでは?と思うかもしれません。
しかし、首と背中は別々のパーツではありません。
例えば後ろを振り返るとき、首だけが回っているように感じますが、実際には胸椎を含めた身体の動きも関わります。
もし背中側の動きが小さくなっていれば、その分を首など別の場所で補う必要が出てくることがあります。
だからこそ、「首が硬い」「肩が凝っている」という症状があったとしても、首肩だけでなく背中の動きまで確認することに意味があります。
胸椎と首の症状について分かっていること
胸椎へのアプローチと首の痛みについては研究も行われています。
2024年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、18件のランダム化比較試験、合計914人を対象に、首の痛みに対する胸椎マニピュレーションについて検討しています。
その結果、短期的な首の痛み、機能障害、一部の頚椎可動域などについて改善が報告されています。
そのため当院でも、「肩こりの原因は胸椎です」と一つに決めつけることはしません。
重要なのは、「肩がつらいから肩だけ」ではなく、隣接する背中の動きも含めて身体全体を確認することです。
肩こりと呼吸は関係する?
当院がもう一つ大切にしているのが「呼吸」です。
肩こりと呼吸。一見すると、あまり関係がないように感じるかもしれません。
しかし呼吸をするときには、肺だけが単独で動いているわけではありません。
息を吸ったり吐いたりするときには、横隔膜をはじめとする呼吸に関係する筋肉が働き、胸郭も動きます。
深く息を吸ってみると、
肋骨
背中
お腹
などが動くことを感じると思います。
そして首周辺にも、呼吸を補助する筋肉があります。
つまり、首・肩・胸郭・呼吸は完全に別々のものではありません。
慢性的な首の痛みと呼吸機能
慢性的な首の痛みがある方と呼吸機能について調べた研究もあります。
2022年のシステマティックレビュー・メタ解析では、慢性的な首の痛みがある人と呼吸機能・呼吸筋力との関係について検討されています。
ただし、こうした研究から「呼吸が浅いから肩こりになる」、あるいは「肩こりだから呼吸が悪くなる」と原因と結果を一方向に決めることはできません。
あくまで両者の関連を考えるための研究です。
また、首の痛みに対する呼吸運動について検討した2025年のシステマティックレビュー・メタ解析では、短期的な痛みや機能障害などへの改善が報告されていますが、研究数が少なく、エビデンスの確実性は低いとされています。
一方で、肩こりがある方の身体を確認するときに、
- 呼吸しやすい身体か
- 胸や背中が動いているか
- 息を吸うときに首肩へ過剰に力が入っていないか
を見ることには意味があると考えています。
ストレスと肩こり
肩こりを考えるうえで、筋肉や姿勢だけではなく「ストレス」も無視できません。
仕事が忙しい日や緊張する場面が続いた日に、「今日はいつも以上に肩が凝っている」と感じたことはないでしょうか。
日本整形外科学会でも、精神的なストレスは肩こりに関連する要素として挙げられています。
つまり、肩こり=筋肉だけの問題ではありません。
仕事
ストレス
運動習慣
生活環境
なども含めて考える必要があります。
これは9月の記事で取り上げた「睡眠・自律神経・呼吸」ともつながる部分です。
デスクワークで肩が凝りやすい理由
デスクワークそのものが悪いわけではありません。
問題になりやすいのは、「長時間、ほとんど身体を動かさないこと」です。
↓
頭が前へ出る
↓
肩が前へ入りやすくなる
↓
腕を前に出したまま作業する
↓
その状態が長時間続く
筋肉は大きく動かすときだけ働くわけではありません。姿勢を保つためにも働いています。
同じ姿勢を長く続ければ、首肩周辺の筋肉は長時間働き続けることになります。
「正しい姿勢を一日中維持する」よりも、
「同じ姿勢を長く続けない」ことを意識してみてください。
今すぐ始めたい肩こり対策
1.同じ姿勢を長時間続けない
最も基本的ですが、大切なポイントです。
仕事に集中すると、1〜2時間ほとんど姿勢を変えていないことがあります。
- 立つ
- 歩く
- 肩を動かす
- 背伸びをする
など、小さくてもいいので身体を動かしましょう。
大がかりなストレッチを毎回する必要はありません。
「姿勢を変える」だけでも、同じ場所へ負担が集中し続けるのを避けるきっかけになります。
2.パソコン環境を見直す
画面が低すぎると、長時間下を向きやすくなります。
椅子と机の高さが合っていないと、肩をすくめた状態で作業していることもあります。
確認したいのは、
- モニターの位置
- 椅子の高さ
- 机の高さ
- キーボードやマウスの位置
- 腕を無理なく置けるか
などです。
厚生労働省の情報機器作業ガイドラインでも、ディスプレイ、机・椅子、作業姿勢、作業時間などを含めた作業環境・作業管理について示されています。
身体だけを何とかするのではなく、「身体に負担をかけている環境」を変えることも肩こり対策です。
3.肩だけでなく背中も動かす
肩が凝っていると、肩を回すことだけに意識が向きがちです。
しかし長時間のデスクワークでは、背中も動かなくなりやすくなります。
- 胸を開く
- 身体を左右にひねる
- 腕を上げる
- 背伸びをする
など、無理のない範囲で背中まで動かすことを意識してみましょう。
4.呼吸を止めない
仕事に集中していると、知らないうちに身体へ力が入っていることがあります。
そんなときは一度手を止めて、自分の呼吸を確認してみましょう。
大きく吸うことを頑張る必要はありません。
ゆっくり息を吐きながら、肩や顎に力が入っていないか確認します。
「呼吸法で肩こりを治す」のではなく、身体が緊張し続けていないか確認するために呼吸を使うイメージです。
5.適度に身体を動かす
運動不足も肩こりに関係する要素の一つです。
特別な運動を始める必要はありません。
- ウォーキング
- 軽い体操
- ストレッチ
- 普段より少し多く歩く
など、続けられるものから始めてください。
どの運動が適しているかは身体の状態によって異なります。痛みを我慢して無理に動かす必要はありません。
肩こりで病院へ行ったほうがいい?
「ただの肩こりだと思っていた」という症状の中に、別の病気が隠れている場合があります。
- 腕や手に強いしびれがある
- 手に力が入りにくい
- 細かい作業がしづらくなった
- 歩きにくさがある
- 強い痛みが続いている
- 転倒や事故のあとから痛い
- 発熱など全身の症状を伴う
- 急激に症状が悪化した
などがある場合には、自己判断で整体やマッサージだけを続けず、医療機関へ相談してください。
日本整形外科学会でも、肩こりの診断では肩関節可動域や頚椎疾患などを確認し、必要に応じてX線、MRI、筋電図などの検査を行うと説明しています。
また、頚椎疾患など別の疾患に伴って「肩こり」が現れる場合もあります。
明らかな原因疾患がある場合には、その疾患に対する治療が必要です。
慢性的な肩こりに整体では何を見る?
鍼灸ライフ整体院では、肩こりの方に対して「肩が硬いから肩だけをほぐす」という考え方だけで施術を組み立てていません。
まず、
- どこがつらいのか
- いつから続いているのか
- どんなときにつらいのか
- 仕事ではどんな姿勢が多いのか
- 運動習慣はあるのか
- 睡眠はどうか
などを確認します。
そのうえで身体を見ていきます。
- 首の動き
- 肩関節の動き
- 肩甲骨周辺
- 胸椎
- 姿勢
- 呼吸のしやすさ
などを確認します。
これは「肩こりの原因は必ず別の場所にある」という意味ではありません。肩そのものに負担がある場合も当然あります。
「つらい場所」と「そこへ負担が集中している背景」の両方を見ることです。
なぜ整体と鍼を組み合わせるのか?
当院では、身体の状態に応じて整体と鍼を組み合わせることがあります。
整体では、首肩だけでなく、背中や肩甲骨周辺などの動きを確認しながら身体全体を整えていきます。
一方、鍼では、状態に応じて首肩や背中などの筋肉へアプローチします。
慢性的な首の痛みに対する鍼治療については研究が行われています。
2024年のシステマティックレビュー・メタ解析では、慢性頚部痛に対する鍼治療の持続的な効果について検討されています。
当院でも鍼だけですべてを解決しようとは考えていません。
- 整体
- 鍼
- 運動
- セルフケア
- 生活環境の見直し
などを身体の状態に合わせて組み合わせることが重要だと考えています。
「原因は痛みの隣」にあることも
当院では、「つらい場所だけを見ない」ことを大切にしています。
例えば肩こりの場合、
↓
首
↓
背中・胸椎
↓
胸郭
↓
呼吸
と身体はつながっています。
もちろん、毎回この順番が肩こりの原因になるわけではありません。
しかし、肩だけを見ていると見落としてしまう部分があることもあります。
「肩を揉んでもらえば、その日は楽になる。でもまた戻る」という方ほど、
- 肩以外の場所がどう動いているのか
- 日常生活で肩にどんな負担がかかっているのか
まで一度確認してみる価値があります。
肩こりを「ゼロにする」より、負担が集中しにくい身体へ
仕事をする。スマートフォンを見る。子どもを抱っこする。家事をする。車を運転する。
生活している以上、身体への負担を完全になくすことはできません。
だからこそ目指したいのは、
「一か所だけに負担が集中し続けにくい身体」です。
そのためには、
- 姿勢を変える
- 身体を動かす
- 背中の動きを保つ
- 呼吸を確認する
- 運動習慣をつくる
- 仕事環境を見直す
といった小さな積み重ねも重要になります。
まとめ
肩こりは、単純に「肩の筋肉が硬い」という一つの理由だけで起こるものではありません。
長時間同じ姿勢を続けること、猫背や前かがみ、運動不足、ストレスなど、さまざまな要素が関係します。
また、首や肩だけではなく、胸椎を含む背中の動きや呼吸との関連も研究されています。
だからこそ慢性的な肩こりでは、「肩が凝ったから肩を揉む」だけで終わらせず、「なぜ肩に負担が集中しているのか?」まで考えてみることが大切です。
- 同じ姿勢を長時間続けない
- 作業環境を見直す
- 背中まで身体を動かす
- 適度な運動を取り入れる
- 身体に力が入り続けていないか呼吸を確認する
強い痛みやしびれ、筋力低下などがある場合には、整体やセルフケアだけで判断せず、医療機関への相談が必要です。
鍼灸ライフ整体院では、肩こりのある場所だけを見るのではなく、姿勢、首、胸椎、肩甲骨周辺、呼吸など身体全体の状態を確認しながら、その方に合わせて整体と鍼を組み合わせています。
「肩をほぐしても、またすぐ戻ってしまう」
そんな肩こりに悩んでいる方は、肩以外の身体の状態にも一度目を向けてみてください。
よくある質問
参考情報・参考文献
この記事は、以下の公的機関・医学論文等の情報を参考に作成しています。
肩こりの症状、原因、診断、予防・治療について一般向けに解説されています。長時間同じ姿勢を続けること、猫背・前かがみ、運動不足、精神的ストレスなどと肩こりとの関係について参考にしています。
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/stiffed_neck.html
パソコンやタブレットなどを使う際の作業環境、作業管理、姿勢、机・椅子などについて示されている厚生労働省のガイドラインです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000207439_00007.html
2024年に発表された、首の痛みに対する胸椎マニピュレーションについて検討したシステマティックレビュー・メタ解析です。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38759063/
慢性的な首の痛みがある方と、呼吸機能・呼吸筋力との関連について検討したシステマティックレビュー・メタ解析です。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35802487/
首の痛みに対する呼吸運動について検討したシステマティックレビュー・メタ解析です。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39941380/
慢性的な首の痛みに対する鍼治療について検討した2024年のシステマティックレビュー・メタ解析です。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38856887/
柔道整復師・鍼灸師
《鍼灸ライフ整体院》
静岡県富士市厚原603-7
9:00~20:00(完全予約制)


